正会員認定レポート集
音からの空想と現実
長尾 計昌(フリーランス)
私は平成11年からコミュニティラジオのボランティスタッフとして音響の世界に入りました。もともとラジオ放送や音楽が好きで仕事場のアイテムとして利用していたこともあり、音響の世界をより身近に感じたいという要望などからのボランティア参加でした。しかし、そのころの私は当然ながら音響に関する知識は無いに等しく家庭用のステレオ設備を配線するぐらいしか出来ませんでした。
ラジオ番組にしてもパーソナリティが番組を自分で録音、編集することが要求されるとは思ってもおらず、当初は何度徹夜をしたことかと思い出されます。
また、録音技術も未熟で三重県知事への突撃インタビューを実施したときに録音機の作動を確認しなかったために収録が出来ておらず番組がだめになったことが最初の失敗だったと今では思い出されます。
さて、このような私が音響の世界で感じたことがあります。それは音から得たイメージ(空想)と現実とのギャップの面白さ不思議です。
まず、ラジオ番組の制作にあたっては番組ゲストやインタビューなどで初対面の方にお会いさせていただくことが多々あります。そのとき、電話でアポを取ることが普通に行われますが電話音声から得たゲストのイメージや容姿などの想像は実際にお会いすると全く違う場合が多いということです。
このように感じられている方は多いことでしょう。
私はこのことを逆手に取った音響の使い方もあるのではないかと思うのです。その例は効果音です。例えば水の流れる音のイメージは小さな流れなのか、大きな流れなのか、原音を加工して違ったイメージを作り出すことが音響技術では出来るのではないかと考えます。
実際の技術ではエフェクトをかけた歌手の出現が私の考えを現実化していると思います。あの歌手たちの本当の声での歌が聞いてみたい。こちらでも全くイメージの違う人たちを見つけることが出来るのではないでしょうか。
「音」とひとくちで言ってしまいますがあんな音こんな音、それを作っていく音響技術。それはすばらしく創造性を持ったものだと思います。
私はこの創造性にチャレンジすることが音の重みと考え学習していきたいと考えています。(2012年2月)
入会にあたってのレポート
山田 賀啓(株式会社 響映)
大阪スクールオブミュージック専門学校のギター科を卒業後、平成10年4月朝日放送設備株式会社へ入社し、滋賀県大津プリンスホテル内の音響業務を行う部署へ配属になりました。
専門学校時代は、ギター漬けの日々でしたので、音響関係のことは全くの素人でした。配属先の先輩方の指導の下、ケーブルの巻き方や機材の使い方等を基本から教わる日々でした。オペレートを任せてもらえるようになってからは、学会から婚礼や一般宴会のオペレートまで、幅広く経験できたことは現在でも大変役立っております。
平成13年10月朝日放送設備株式会社を退社、平成13年11月に現在所属しております株式会社響映へ入社いたしました。
ホテルでの音響業務運営も行っている会社でしたが、いわゆる外回りを担当する部署の第二営業部へ配属になりました。
現在はイベントやコンサートの仮設現場や、取引先ホテルでの仮設関係の現場をこなす日々を送っております。
その中で、明らかに自分の仕事レベルの許容範囲を超える現場等に出くわして、自分の無力さに「この仕事辞めようか」と思ったことが何度もありましたが、音楽系の現場等での出演者と観客の一体感を感じたとき、その空間の演出の一端を担っているという感覚になって、辞められませんでした。上司に教えられたこと、自分自身の失敗から学んだことを積み上げて日々の業務の中でのスキルアップを心掛けておりますが、知れば知る程、知らないこと・知りたいこと・やってみたいことが積もって行きます。
次の現場ではこれは止めておこうとか、この間フリーさんから教えてもらったマイキングを試そうとか、同じ様な環境の現場においても前回と違うアプローチをしてみようとか、トラブルにならない範囲でですが試行錯誤しながら現場に臨んだ結果
出音、クライアント様やお客様の表情に変化があり良い反応が返って来たときには、言葉には出来ない嬉しさがあります。去年からは、協力会社様の協力でラインアレイの使用を何現場か行いましたが、設置に関することやオペレートに関することで色々と参考になりました。今までのスピーカと比べてミキシングされたときの音の混ざり具合が、初めてデジタルミキサーを使用したときの感覚に似た別世界を感じました。
うまく言えませんが、何か今まで以上にアナログ的感覚を研ぎ澄まさなければ、上手くコントロールできないのではないかと焦りを覚えました。デジタル音響機器の普及によりデジタルのこと、システム制御に使用するパソコンに対する知識、音に対する理解を更に深めていかなければと思います。
今回、日本音響家協会への入会を期に様々な諸先輩方との交流を深め、自分自身の視野を広め、技術と知識、心がバランス良くミックスされた音響オペレーターを目指したいと思います。
お客様とミュージシャンの架け橋
赤松雅史(SOUND GENERATION)
私がこの業界に出会ったのは、高校1年生の時当時吹奏楽部に所属しておりまして、ちょくちょく楽器屋に出入りしているうちにSRの現場を手伝いだしたのがこの業界への第一歩でした。当時仲間の間では、バンドがブームでSRとミュージシャン両方の意見や要望を聞いていくうちにこの仕事の魅力に気付いて行きました。
観客としての聞こえ方演奏者としての聞こえ方これらは一緒の物であり又全くの別物でありそれぞれの要望に応えるサービス業、今はこの仕事にやりがいを感じています。
最終的には観客・演奏者双方の満足を提供できるオペレータをめざしたいと思います。
今、私の中での一つの目標として、ただ原音を忠実に再生するPAではなく、いかに観客の聞きやすい音を届けられるかが、今の自分の課題になっています。まだまだ未熟な私ではありますが協会を通じて色々な勉強・ご指導いただき目標を持って向上していきたいと思います。
私の音造りのこだわりと、日本音響家協会への期待
中西 真実(株式会社クロスビジョン)
未明に阪神地区を突然襲いかかった、あの阪神大震災の年平成7年の4月に、私はTV番組制作プロダクションに就職しました。以来11年間に亘り、ビデオロケ・TV中継・VP制作などの現場で、音声業務を担当しております。
これらの制作現場において「造った音が、どのように受け手側に届いているだろうか?」「自分の思いが、ちゃんと伝わっているだろうか?」「良い音とは?」といつも問題意識を持ちながら担当するように、と最初に先輩から指導を受けましたので、いつも自分自身でそのことを心がけてきました。例えば毎年、正月に実施される箱根駅伝の大中継番組で、ある区間の中継ポイントを、ここ5年担当させてもらっています。
ほんの一瞬、目の前を走りすぎるランナーに送られる沿道の観客からの声援と熱気を、自分の意図した音造り・収音ポイント・SEマイクアレンジ・バランスなどが、適切であるかどうか? 私は自分の送り出す音の評価について、直接フィードバックされやすい生放送であることを利用して、中継本番の前に現場から音にかかわっている遠く離れた友人・先輩・またごく一般レベルでの、視聴立場にいる家族などに、携帯メールでモニターを依頼します。放送終了後、次々に送られてくる厳しい感想メール。自分自身でも気になっていたこと、また全く気がつかなかった点など、参考になる多くの意見が集まります。これらに加え、現場に直接入ってくるトータルミクサーからの指摘などを、翌日の復路の収音に生かし、さらに次の年の中継の音造りの設計のヒントとして役立てています。
わずか一瞬の通過ですが、そこに繰り広げられる現場のドラマと感動と熱気を「音」で表現できるよう、私なりに毎回、音造りにこだわっています。このほかにホールの収音で、ステージを担当する機会もあります。がPAミクサーからの指示が、十分理解できていない状況のまま、進行していることもあり、戸惑うことも多々あります。
日々、ただ忙しさの中で流されていってしまう業務の中にあって、これではいけない。しっかりとした音響のプロ集団の中で、一つ一つ基礎から技術を学ぶ機会はないかと求めていましたところ、日本音響家協会の存在を知りました。
先日、高砂市で『JAZZ音響塾 part8』に見学参加の機会を得て、プロの技術の分かりやすくも、奥の深い指導を目の当たりにして、自分の求めていたものがそこに存在することを確認いたしました。そしてすぐ、入会手続きをいたしました。
今後『音』にこだわり続けて行く上で、さらに多くのプロの技術を学び取り、セミナーへの参加を重ね、いろんな集まりに参加することで、自分自身のスキルアップをして多くの人達にいつまでも感動を与えることのできる音響家として、音造りに従事できればと、夢はさらに大きく広がります。
音の難しさ
三崎 昭吉(特定非営利活動法人ドッグイヤー)
5年ほど前に友人から、今度ミュージカルをやるから手伝ってくれないかと言われ、軽い考えでお手伝いをさせていただきました。
ところが、入ってみると現実の厳しさと難しさがもろに感じられるのに私自身こんなに感銘したことはない。
それは、入った時に音に興味があり、音響のお手伝いをさせていただくことになった。
その時の主任の方は普段は温厚な方だった。しかし、演技が始まると舞台監督さんとのやりとりで妥協を許さない真剣さにびっくりするやらで・・・そのあと、そのかたから俺は当日運行しない。見る側にまわるから、すべてはおまえがやれと言われ、少し驚いた。その後に言われたことにも驚きが「音は誰でも出せるでも音は出すものではなく、感動を与える一つの道具だ」といわれ納得した。
今は、この言葉を心に焼き付け、音に向かい合っている。自分の中では、まだまだ未熟で音で感動などは与えられない。今まで、自分は自己流で音に関わってきたが、今回、この協会に入会させていただいたことを名誉に思い、音についてもっともっと勉強をしていきたい。
先だっても、仕事でドームでのPAを受けたが、満足ができなかった。
ドームの備品でのオペーシングでその機会の癖などがわからず、出演者に満足な音が提供できなかった。自分の装置では音が出せても、装置が変わると出せない難しさに諸に痛感させられた。こんな未熟ものですが、先輩方々の技術を学び助言をうけながら、音響の発展に貢献していきたいと心に思った。
音響雑感 武村 良裕(メディアプロジェクト)
私は、音楽を愛し、学生時代から演奏活動をしている中、音や、機材、技術に対しての興味から、楽器関連の仕事につきました。
ミュージシャンが、演奏しやすい音環境、オーディエンスの立場での音環境の問題、PAという道具を通しての音環境というものにすごく興味があったのです。アマチュアバンドのサークルを企画、運営し、200名を超える会員を抱え、コンサートの企画、運営を、仕事半分、趣味半分でやってきました。
人任せのPAから、より良い音を求めて、個人的にJBLのシステム、YAMAHAのコンソール等を自前で購入し、2Tトラックを購入するにいたりました。出会ったミュージシャンの中には、メジャーデビューし現在も活躍している人もいます。
その後、楽器アンプの開発製造等を経験して、その頃SRと言う仕事の業態が始まりはじたので、独立しSR会社「(有)ルイサウンドサービス」を設立、SRの仕事を通じて“良い音とは?”を常に心に留めて、音に関しての仕事をして参りました。当時を振り返ると、今のように豊富な機材が無い中、工夫をしながら沢山の仕事をしてきたように思います。そのような活動の中から、ホールの管理音響委託をうけました(万博記念ホール、茨木、枚方市民会館、ホテルの設備管理)。既存設備の中で、良い音環境を確立することの難しさ、行政と文化と会館管理の立場の狭間でいろいろ矛盾を感じながら、より良い音環境を求めてきたつもりです。
そうした関係から多くのSR会社と知り合う機会があり、別々に少量の機材を持ちお互いに協力関係のないSR業者を円滑になるよう調整活動してきました。努力の甲斐あり、能力と関係なく機材量のみで、大手の独占であった大規模なコンサートを中小SRカンパニーが受注できるようにと、SR5社で「株式会社音響機材センター」を設立、良質な機材環境でオペレーターが能力を発揮できるよう会社を運営してきました。
設立当初は理想のSRカンパニー支援のできる会社と多方面から注目されました。各社が、独自に営業を広げ、機材を充実し、技術的にも全国レベルに達したとの判断から、惜しまれながらも、発展的に解散を余儀なくされました。この経験を基に、新たに「株式会社メディアプロジェクト」を設立、全国ネットワークを組織、機材を通しよりよき音響環境が提供できるよう活動して参りました。その活動の中から、全国レベルの技術水準を知ることができ、自分がやってきたことが間違っていなかったことを再確認でき、と同時にやはりスタッフの育成の重要性を痛感しました。
近年、最新SR環境の勉強会を開催、その中で人材育成もできればと、テーマを変え続けてきました。少しでも良質でミュージシャン、クライアント、観客に喜んでいただける音を、機材、スタッフの両面から提供できればと日々努力しています。
日本音響家協会の活動と近いところがあり、協力ができればと入会しました。
これからのホール設備音響に思うこと 奥野 貴之(ジャトー株式会社)
1.入力回線
ホールの改修工事といえば、10年から15年が経過した場合がほとんどです。
現在考えると大半は回線が少ないのが現状で困られている場合が多い様である。対応したい項目
持ち込み機材に対応したコネクター設置
上手、下手、客席コンセント盤のコネクター形式には、16、24、(32)チャンネルマルチコネクターを設置し持ち込み機材を頻繁に使用されるホールに対応できればと考えます。それぞれ単独で設置すると規模が大きくなるため、一部の回線は16、24、(32)チャンネルコネクターをパラ接続としても使用頻度から考えますと良いと考えます。
2.仮設電源
現状
持ち込み機材のパワーアンプも大出力化しつつあり、特にアムクロンの2402や3600シリーズを利用されるケースも多くこの場合、1台あたり20A以上の電力が必要です。3Wayスピーカを4式設置する中規模のシステムを構築した場合、片チャンネル当たりパワーアンプは6台必要となりこれだけで、120A(12,000VA)が必要となります。対応したい項目
上手・下手合わせると24,000VAが客席拡声用に必要となります。ステージモニターや音声調整卓、その他の機材などを含めますと40,000VA程度が必要でないかと考えられます。
3.音声調整卓のアナログとデジタルについて
現状
◎デジタルを選択される場合
入力ソースの表示からレベル、アサイン、EQ、コンプ、出力レベルまで設定状況がすべて登録できる為、オペレータが変わった場合でも引継ぎが容易であり、比較的確実に行える。小学校の演劇など、1日で幾つものクラス演劇がある場合、ステージに合わせた変更に容易に対応できる。
照明卓は、ぼはデジタルが主流となり、音響もデジタル化を急ぐべきと言った観点から、積極的に採用し進めたい、もちろんバグや、システムダウンは承知している。
などである◎アナログを選択される場合
デジタル卓に比べトラブルが少ない。操作性が容易である。
音質に優れた良い機材が多い
ラインナップが豊富で目的に適した機種の選択が可能である。
デジタルを採用するほど複雑な催し物がない。
トラブル発生時時にでも、何とか対応出来しながらイベントを終える事ができる。
などである4.録音再生機器について
最近はMDデッキが主流となりつつあり、2台は必要と思われる。
トラブル時には、まったく再生出来なくなる為、2台あれば安心である。以前から記録用にはDATデッキを採用されるケースが多く、現在でも利用されるが、ホテルの複数ある宴会場では、マルチチャンネルのハードディスクレコーダーで一括して長時間記録されるケースも多くなってきているのも現状のようである。
5.シグナルプロセサー
現在では多数のシグナルプロセサーが選択できる様になり大変重宝である。
選択基準は下記の様である。
パソコンからリモコンが出来る。(客席から音場補正ができる)
音質の変化が少ないこと。(AD/DAで音質の変化が大きい機種も珍しくない。)実際のEQのカーブがグラフィック表示できる。
(現在はXTAを要求されるケースが多い。)6.パワーアンプ
やはり以前から要求の多いアムクロンが現在でも要求が多い。
音質には独自の物があるがやはり優れたものがある様である。音の純度が高く、情報量が多い。
周波数レンジは多少狭いが、必要な帯域は情報量が大変多く、レスポンス、スピーカのドライブ能力が大変高い。
内部構造、使用されている部品から判断すると当然かも知れない。
欠点は
価格が高い。ファンノイズが大きい(通常のアンプの2倍程度うるさいく、暗騒音を劣化させる可能性もある。)
3600シリーズは電源容量が30A程度確保する必要があり、コンセントも厳密に言えば、C型コンセントが必要となり固定設備としては、特殊な形態となる。(以前のRAMSAの様に20A(15A)×2回路でも良かったのではないか。)
7.スピーカについて
固定設備においても、1ボックススピーカが主流となりつつあるが、施工性の容易さなどで有利となるが、アレー構造に出来ない固定設備に於いては、十分な性能を発揮出来ないケースも少なくない様である。コンポーネント(ダブルウーハーLOWボックス、ロング/ミディアムスロートホーン、コンプレッションドライバー(ネオディウーム磁器回路)の組み合わせとし理論上、正確に構成、施工された場合には、優れた拡声性能を発揮出来る可能が高く、この構成を今一度見直してみる必要があると考えられます。
特徴
特にロング、ミディアムスロートホーンは指向特性に優れ、高いQ特性を確保している。クロスオーバーを500Hzから設定することが可能である。
ネオディウーム磁器回路は高価であるがフェライト磁器回路とは一線を画す。
今一度コンポーネントスピーカシステムを見直す必要があると思います。
映像制作における音声収録への心掛け、または目標 笹邊 幸人(株式会社千里ビデオサービス)
この度日本音響家協会へ入会させて頂きましたことを機に、映像制作を行っていく上で音の重要性と、その難しさや深さを再認識すべくこの小文を書かせて頂きます。
私が映像の世界に入ったのは今から約30年ほど前になります。当初は商業写真やライブ写真、動植物の写真を生業にしていました。当時はまさか自分が録音、録画という動画の世界に進むなどとは考えてもいませんでした。
ちょうど名古屋のCMフォトスタジオでカメラマンをしていた1980年頃ですが、常連だった山小屋で「山の歌のカセットテープを作ろう」ということになりました。当時趣味で持っていたデンスケやF115というマイクを持って一発録りを何テークか行い、それを生意気な自信とともに名古屋の某スタジオに持ち込んだことが全ての始まりとなったのです。
「これをカセット300本にしたいのですが」−−私とりあえず視聴、しばしの沈黙
「これ、どこで録ったの」−−年輩の社長
「はい、私が山小屋で録りました」−−私、ちょっと自信を持って・・・
「ふ〜ん?そう。このままじゃカセットに出来ないよ」−−社長
「??」私
「このままカセットにすれば、歌い手に気の毒だね」−−社長さん何やら操作をしてスタジオモニターから出てきた音は、まるでプロ歌手のレコード(当時CDは無かった)のような音がしたのです。今思えば鉄板エコーか何かでエフェクトを付けて頂いただけなのですが、そのときは衝撃でした。
70年代からのHiFi指向が一瞬で崩れ去ってしまったのです。臨場感、効果の重要性を教えてくれた社長、話を聞くと元々カメラマンだったそうで、少し自分に似たところのあるくそ生意気な若いカメラマンを放っておけなかったようです。今も現役の社長は私にとって初めての音響師匠だと思っています。
私が動画の世界へ転向した理由は「音が鳴ることの面白さ、楽しさ」です。
同じ映像であっても「静止画」と「動画」では作品意図の伝わり方が全く異なります。静止画(写真)の場合は文章に頼ることで、見る人による捉え方の差異が非常に大きく、時に意図とは全く反対になってしまう場合も起こります。ところが動画の場合は音声(言葉)が付くことで伝わり方がストレートになります。また、雰囲気音によって臨場感が伝わります。決して写真とビデオに優劣を付けるのではなく、写真とは違う表現方法が私にとって楽しいのです。それに師匠(社長さん)が行ったと同じことを自分も出来るという喜びも存在しています。現在、私は映像技術会社を経営していますが、仕事のおよそ半分は舞台での収録になります。内容は多種多様ですが、いずれの場合も音声は臨場感を大切にするように心がけています。ホールでの収録での大半は音響卓からいただくライン音声が中心となりますが、やはり臨場感のためにエアの収録が重要になります。また、エアを多くするためにラインにディレーを掛ける必要も出てきます。時にバンドのライブでは音響卓のバランスでは収録出来ない音が有るため、ギター、ベース、ドラムなどは映像側でマイクを立てる必要も生じます。
しかし、どんな技術を使う場合でも、最も大切に考えることは臨場感であり、映像に合った音作りをしなければならないということです。「映像からは目を反らすことが出来ても、音から耳を反らすことは出来ない」というのが私の映像制作の基本です。スタッフにも常々「音がしっかりしていれば映像はよりよく見える」と繰り返しています。そしてMA技術や成音技術が進歩しても、現場で収録した音が駄目なら最後まで駄目とも考えています。
最近はネットでのストリーミング中継なども盛んに行われ、私の小社でも何度か中継を行っていますが、画面が小さく、画質が貧弱であっても「ストリーミングは世界向けブロードキャスト、音がしっかりしていれば視聴者に認めてもらえます」と代理店やクライアントを説得している状態です。
私が映像制作を行っている基本に音ありき、ということを諸先輩にむかって、稚拙な内容を羅列いたしましたが、まだまだ学ぶべきことが多々あります。技術だけではなく、舞台という世界で仕事をするために必要な約束事等、映像の人間はまだまだ学ばなければならないこと、教えて頂かなければならないことがあります。映像の人間の中には横柄な態度で挨拶もなく「ライン下さい」「電源下さい」「照明暗いです」などという者がいます。私自身も「ライン頂けますか」とお願いするわけですが、つい「自分でマイクも立てずに、音響さんがバランスを取った音で制作協力していただいている」ことを忘れがちです。
これではいつまでたっても映像が舞台スタッフには加われないのは当然です。「音を頂けること」「灯りを頂けること」「板をお借りできること」へ感謝しなくてはなりません。私が今までホールで仕事をさせていただけたのは「音響さん」「照明さん」「舞台さん」達のご指導があってのことと考えています。音響家協会に入会させて頂いたことを重く受け止め、自分自身を律すると同時に、舞台で仕事をさせても恥ずかしくない映像スタッフの育成にも力を注ぎたいと考えます。
入会所感 竹内 康広(有限会社エスピー神戸)
私は、現在(株)エフエム大阪の外部技術スタッフとして、社員さんのご指導を仰ぎながらON-AIRのトータルリミッターであるOrban社製のサウンド・プロセッサーの調整をしています。ラジオを聞かれている状況は実にさまざまですので、どの様な音作りをすればリスナーさんの心地良い時間を過ごすお手伝いが出来るか日々、模索しております。
以前は、車・小さいラジオでの聞こえ方に重きを置き、ガンガンにコンプレションを掛けていた状態でした。メーカーさんにも、よくここまで追い込めますね と言われるぐらいにAGC・5BANDリミッター・コンプレッサーの設定値をきつめに、変調度を常に100%に保つようにしました。広がりが少なく、つまった感じで聞こえていましたが、仕方がない的にしておりました。
しかし、GLAYのTさんがご自身の番組で「全国の放送局の皆さんリミッターをはずして聞きましょう。」とGLAYの新曲を紹介なさっていたのを耳にしましてハッとしました。アーチストの方が心血そそいで曲創りをし、レコーディングに望んでいるのに、こんな簡単にバランス・音質を変えてしまっていいのか?ラジオを聴いてCDを買った人は音のニュアンスの違いをどう思うだろうかと考えさせられました。
3ヶ月程、ほんの少しずつ設定値を変えていきながら音が自然な感じで聞こえるようなポイントをさぐりました(送信機を守るため抜けていくピークはリミッターが掛かるようにしました)。すると、あるギターリストの方が、ご自身が楽曲提供されている曲が流れた時、自分が作った曲のイメージの音にかなり近くなったと言っていたよと人づてに聞きました。とても励みになる言葉でしたし、ものすごく勉強になりました。
まだまだ、これというポイントは探しきれていないですが、「ラジオの向こうをみる」という原点に戻れた気がします。今回、SEASに入会したことで、いろんな方と交流してさらに勉強して「ラジオの向こうをみる」を極めていきたいと思います。私自身が伝えられる物はすごく薄いかもしれませんが、お願いいたします。